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絵本のおかあさん ehonkasan.exblog.jp

子どもたちが通った幼稚園で、絵本の読み語りボランティアのお母さんは、『絵本のお母さん』と呼ばれています


by yomuyomuehon
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いっていることはうそでも うそをつくきもちはほうとうなんだ

廃校の一室にある、こじんまりした図書館。

そこで一人コーヒーを飲みながら雑誌をめくるのが好きだ。

もう少し雑誌の種類があったら良いのに・・・と思うのだけれど、そうなれば人も多くなるだろうし、この小ささが気に入っているので仕方ない。

昨日は暮らしの手帖をめくり、荻上チキさんの『みらいめがね』で思い出した事があった。

小さな田舎の学校で、私の学年は一年生からずっと一クラスだったので、脳裏に浮かぶ面々で学年は定かでないが、その時に否定もせず、ただ、「へえ」「そうかあ」なんて相づち打ちながらそばに居る先生が5,6年を担任した宮崎先生である。

だからおそらく5年生の時だったのではないか・・・

当時、口さけ女なる奇怪な化け物?当時私は化け物と思わず、実在する怖いやつって認識だったと思うのだが、兎にも角にも巷の話題をさらっていた都市伝説があった。

今と違ってネットなんてものは無いのだから、全国に口コミで広がっていった事がすごいわけで、それだけみんなパニックになっていたのである。

何しろ、「わたしきれい?」と振り返った女は、耳元まで裂けた真っ赤な口と、手には鎌を持つ。

「きれい」と答えても「きれいじゃない」と答えても、同様に鎌で口を裂けされると言う。

その口裂け女の話を、先生を囲み、超密な状態で、興奮しまくってクラス全員がしていた時に、「せんせい、せんせい、昨日ね、うちのお父さんがね、仕事の帰りにね、あったんだよ」と和也君が言った。

うちの娘でもあれば、「ママ、聞いて。今日ね、○○が・・・・って言ってたんだよ。ほんと、ばっかみたい」と一蹴されてしまうような事なのだが、みんな「すげー!」とか「えーっ、こわーい」とか言って認めていたし、「お父さん、大丈夫だった?」と心配さえしていたのである。

まさか大人まで信じていたわけではないだろうと思うのだが、先生は否定しなかったし、笑い飛ばしもしなかった。

そして和也君のおとうさんはといえば、教員だったのである。

その話を思い出したのは、荻上チキの体験談を読んでのこと。

小学生の時、郵便配達の格好をした人が、「おじさんはヤギの郵便屋さんなんだよ。お腹が空いたから、今から葉書を食べちゃうよ」と言って、自転車にくくりつけたボテ箱から葉書を次々取り出してむしゃむしゃと食べ始めた。最初呆気にとられて眺めていた子どもたちは、「すっげー、すっげー」と歓声をあげ、荻上さんも、飲み込むなんてヤギにしか出来ないし、葉書が食べ放題の郵便配達員は、ヤギにとって転職だろうなと思ったそうだ。

嘘みたいな話なんだけど・・・

うそ

谷川俊太郎

  うそ

 ぼくはきっとうそをつくだろう
 おかあさんはうそをつくなというけど
 おかあさんもうそをついたことがあって
 うそはくるしいとしっているから
 そういうんだとおもう
 いっていることはうそでも
 うそをつくきもちはほんとうなんだ
 うそでしかいえないほんとのことがある
 いぬだってもしくちがきけたら
 うそをつくんじゃないかしら
 うそをついてもうそがばれても
 ぼくはあやまらない
 あやまってすむようなうそはつかない
 だれもしらなくてもじぶんはしっているから
 ぼくはうそといっしょにいきていく
 どうしてもうそがつけなくなるまで
 いつもほんとにあこがれながら
 ぼくはなんどもなんどもうそをつくだろう

「いっていることはうそでも うそをつくきもちはほうとうなんだ」・・・確かに

つい注目を浴びたくて、出てしまった和也君のうそ。

否定しなかった先生。

理不尽なことで切れていた先生でもあった。

三日間授業しないで、私たちに校庭の草むしりを強いたこともあった。

その理由はかなり無茶だった。今の私なら黙っちゃいない。

しかし当時は大人が怖かった。

そんな先生でも、子どものアホな話を聞いてくれていた事に、今更ながら驚く。

さて、そこから40年以上経った私は、子どものうそを真っ向否定してないだろうか。

嘘でも本当でも、まずは一度だまされてあげなくちゃねと思った日曜日の図書館。



by yomuyomuehon | 2021-08-09 14:42 | 詩集