現代史☆「十三湖のばば」
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読んであげるなら 7、8歳~
この本は、青森県津軽半島のある十三湖が舞台である。
腰切田といわれる深い泥田で、小作をして暮らすばば。
男子5人、女子6人の計11人をもうけるものの、不慮の事故や戦争で、次々と子どもを、そして夫も失ってしまう。
この話は、ばばが直面した死を描いたものである。
まずは田植えの最中に、赤児だった5番目の子トメを失くす。
田植えの時期は忙しく、赤児はエジコ(藁で編んだ桶みたいなもの)にくくり付け、ぬかるんでいない畦に置いておく。
田植えの最中に、赤児がどんなに泣いて呼んでも、乳を飲ませに戻る事はない。
なぜなら、田植え中は腰まで田んぼに浸かっていて上がれないし、いちいち上がっていては田植えが捗らないからだ。
昼飯時までそうやって放って置くしかない。
ある日、薄暗くなって田から上がると、そこにトメの姿が無かった。
上の子が負ぶって帰ったのだろうかと思い家に戻ってみたが、そこにもトメの姿は無い。
田んぼに戻って、村中の人びとが探してくれて・・・トメが見つかったのは、明け方だった。
トメは堰に挟まって死んでいた。
水から童子を守ってくれると言われる水虎さま。
ばばも5.6日前に一番初めに出来たきゅうりを備えたばかりだった。
それなのに・・・それなのに・・・水虎さまはトメを守ってはくれなかった。
ばばの苦しみや、その後の水虎さまを叩き、そして池に投げ捨てた気持ちは、同じ母親として、痛いほど伝わってくる。
しかし、祠から水虎さまが居なくなった、また子どもが連れて行かれると、村中が大騒ぎになって、田植えどころではなくなった。
こうなっては、ばばも水虎さまを元通りにしないわけに行かず・・・
元通りになった水虎さまを見て、みな安心したのだが、10日もして、すぐまた村の童子がせきに嵌って死んでしまったのだ。
この話が一つ目で、胸がきゅーっと締め付けられる思いがした。
しかし、その後の話は更に過酷で悲しくて・・・
二番目に死んだのは、長女で12歳(小6)のミチ。
朝から頭が痛いと起きて来ないミチを、忙しい時に怠けるな!と厳しい親父。
ばばは、親父に、ミチを必ずつれて来いと言われ、つい新しい着物を買ってやるから・・・と言ってしまった。
すると、よたよたしながらも起き上がったミチ。
ばばがミチを起こすと、熱がある。
しかし、ミチは着物と聞くと、さっさと仕事着に着替え田んぼに向かったのだ。
胸まで浸かって田植えをするミチ。
本当によく働く子だった。
昼飯時、ミチはいくら呼んでも上がって来ない。
放って置け!という親父。
ばばが近くまで行って呼んでも、ミチの返事はなく、動かない。
ばばが「死んでるみたいだ」と言っても、「死んだ真似してるだけだべ。根性わりい童子だ」と言って取り合わない親父。
ばばと長男の多助が畦まで上げてみると、ミチは本当に死んでいたのだ。
新しい着物欲しさに、熱がある身を押して田植えに向かったミチ。
なんともやりきれない。
そして三番目に死んだのが、次男で14歳の忠次郎。
ちょっとでも雨が降れば、また北西の風が吹けば、すっかり水に浸かってしまう苗や稲。
そのくせ、雨が降らないときはすっかり干上がってしまう。
そうならないように水車を回すしかないのだけれど、夜、水車を踏みに行くのだ。
朝早くから腰まで埋まって田植えをしている身体はくたくただ。
寝ぼけ眼で水車を踏む。
その内、忠次郎は落ちて水車に巻き込まれた。
何かが絡まったみたいになってびっくりした親父は「ねぼけるでねえ。」と怒鳴って水車を踏んだ。
その間、忠治郎は水車の下でもがいていた。
気がつかない親父は、そのまま寝ぼけて水車を踏み続けた。
こうして、自分の子を自分で殺してしまったのだ。
こんな事があっても、生きていくには、また別の子が水車を踏まなくてはならない。
その後も、食糧難の中、毒のある木の実を食べて死んだ五男兵五郎、7歳。
次は夫で44歳だった。
そして大洪水の中、稲島を守るために出て行って溺れ死んだ長男多助24歳。
生まれてからすぐに死んでしまった子や、
飢饉の時に上方の工場に働きに行ったきり、どこでどうしているか分からない子もいた。
折角大きく育った三男勇三24歳も、後に四男四郎20歳も戦争に取られ、骨になって戻って来た。
10歳を過ぎれば、一人前の働き手だった時代。
彼の地の農作業は信じられないほど過酷であった。
そして、これらは今からたった3代ほど前の実話だという事に驚く。
歴史を語る時、例えば今流行りの真田の事など、戦国時代の話はそこに生と死があっても、すごく遠い時代の話であるゆえか、「ロマン」と言う冠語も付いたりする。
読み物の中でも格好良く表現されている。
一方、十三湖のばばなどは、ついこの前の話であり、非常に正確な歴史であるが、こういう農民の暮らしは、特に子ども達にはあまり知られていないだろう。
現代史は短い期間にボリュームがあり過ぎるせいか、学びきれていない気がする。
この本は、青森県出身で。千葉県の元小・中学校教諭鈴木喜代春さんが、津軽地方の言葉で描かれた物。
方言なので、子どもには難しいところもあるかもしれないが、ばばが語っているままに口語で書かれているので、何となく分かるのではないかと思う。
是非、今を生きる子ども達に、ちょっと前の子ども達がどんな暮らしをしてきたか、この本を読んで知ってもらいたいと思う。
語りだから、本当は語ってもらって聞くのが一番ではある。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
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